シンデン・ジュパンとの気楽な30分対話狩野裕美(ソロ在住)+松本亮 |
| ……8月のヌサンタラ・ワヤン週間、ありがとう。ジョクジャで、いろいろ協力してもらいました。それはともかく今日は、一寸あなたのことがお聞きしたいのです。早速ですが、あなたのワヤンへのシンデン・デビューはいつごろのことですか。 狩野はい、新宿文化センター小ホール、1989年秋。松本さんの脚本演出のワヤンでした。 ……ほう。いきなり、これは驚きです。あの「恋多きアルジュノの恋の終り」? 狩野 そうですか、びっくりされましたか。 ……ごめんなさい。あなたがあの時のシンデン? へえ、ぜんぜん思い出せません。 狩野 それから、96年9月にジャワへいって、10月に運よく、ジャワでのシンデン・デビューができました。場所はグヌン・キドゥルで。3人のシンデンといっしょでした。ダランはジョコ・リアント。 ……ああ、優しそうなダラン、芸大のダラン科の先生ですね。去年の私のマンクヌガランでのワヤンに来てくれて、わざわざ、よかったよ、と声をかけてくれました。で、いままで、一番多く付き合ったダランはだれですか。 狩野 パ・プルボ・アスモロですね。1998年ごろから。もう10年くらいになりますね、とぎれとぎれですけど。 ……ほう、パ・プルボね。もう20年も前になりますか、私がチャーターしてマンクヌガランで「スリカンディ弓を習う」を上演してもらったことがあります。この7月には、日本にもランバンサリの招待で、たった一人で見えましたね。 狩野 パ・プルボのときはコール(斉唱)が多いんですね。みんなで一緒に歌うんです。 ……どんな演目が多かったですか。 狩野 チュリタ(物語)? そうですね。あまりおぼえてない。 ……はあ、そうなんですね。だいたいが、ガムランの人たちもダランの指示でその曲を奏していれば、演目がなにか知らなくても、物語はしぜんに展開していく。ジャワの伝統的なワヤンはやはりダランのワンマン・ショーなんですね。 2001年、前橋のパ・マンタプ公演の時はマンタプ夫人と二人で歌われました。パ・マンタプのシンデンとしては、いつごろからでしたか。 狩野 前橋の一年前くらいからでしょうか。あのころ竹之内有美子さんが、パ・マンタプのコーディネイトをされていて声をかけて下さったんです。いつもというわけでなく、シンデンが足りないとか、空いてるとき出かけるというふうでしたけど。 ……前橋のあとは? 狩野 あまり縁がなくなりました。有美子さんがパ・マンタプのところを離れられたからかと。 ……すると、あとはまた断続的にパ・プルボですね。パ・プルボのワヤンの面白さは? 狩野 そうですね、いろいろあるんですけど。とくに道化の入れ方が音楽とのかかわりで、すごくいい感じ。ユーモアがすてきです。 ……おお、そうですか。プノカワン(道化)といえば、私にはキ・ナルトサブドですね。マニュロで生き生きして、というか、ヤケっぱちと思えるほど出たり入ったり。その即興の見事さを思い出します。ところで、パ・ウントゥスのシンデンとしては? 狩野 これがおかしいんですよ。1998年頃だったと思うんですけど、STSI(芸大)からのお声がかりで、ダランはキ・マンタプということで出かけたら、違う。誰だろうと思っていたら遠くから「シンデン・ジュパンか」って声が聞こえるんですね。あなたは誰ですって聞いたら、パ・ウントゥスだったんです。そのころもう結構やってたそうなんですけど、私は知らなかったんですね。 ……私がパ・ウントゥスのワヤンを初めて見たのが2002年。ジョクジャのストヨさんから、まだだったらぜひ一度見て、とすすめられた。ソロの知合いの人たちからはあまりお勧めのダランじゃないと。だけど抜群に面白かったですね。「クムボカルノの昇天」でした。人形のすがた、音楽、展開などに、新しい時代ってものを感じましたね。 狩野 私はここ一年ほど、ちょいちょい主催者からのお声掛かりでパ・ウントゥスに出てたんですが、あまり好きなダランじゃなかった。それが、この8月ごいっしょしたプルウォケルトの「ムルウォコロ」は、すばらしかったです。あんなに一生懸命やってるの見たことない。たぶん松本さんがいらしてるのを意識してた、それしか考えられません。変わり様が大変。 ……あの時の裕美さんのシンデンぶりはすてきでしたよ、花があって。どんなダランでもあなたを呼びたがるんじゃないですか。そうですね、私が見るパ・ウントゥスはいつも見事です。そうね、私はパ・マンタプ一行に3度も日本で上演してもらった張本人だからかな(笑) では、また度々お話を聞かせて下さい。ソロではお元気で。(八幡山で。文責=松本) |
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