小旅行小報告

松本亮



 8月15日、同氏の徹夜の「ムルウォコロ」上演を見たので、思いついたことを以下に。
 キ・ウントゥスは、1966年、中部ジャワ北海岸、トゥガルに生まれる。今年42歳。当代きっての気鋭のダラン。並みいる個性派ダランのうち群を抜く高額のギャラをかせぎ、ともあれ一世を風靡しているといわれる。大いに胡散臭く思われている向きもある。1990年代前半ころの、キ・マンタプ・スダルソノも一部の人から結構敬遠されていたことが思い出される。
 キ・ウントゥスの父君はワヤン・ゴレ・チュパのダランだった。ワヤン・クリ上演を主とするその息子だが、チルボン・スタイルを人形の形、音楽をはじめ、すべて大きく受け継ぎ、それを激しく現代化している。彼のワヤンは朝まで生き生きして、人をどきどきさせるのだ。
 彼はキ・マンタプ、キ・バンバン・スワルノを師と仰いでいる。彼の手記によれば、1983年十七歳前後、しきりとソロのASKI(芸大の前身)へ通っている。ここは当時、ワヤン・パダット、ワヤン・サンドサなど前衛ワヤン探究のメッカであり、壮年のキ・マンタプ、キ・バンバン・スワルノらを先頭に、創作ワヤンの機運が高まっていた。ワヤン・パダットの手法がいま彼らのワヤンにみごとに生きている。この手法がなければ、ワヤンはつまらなく見える。
 たまたまだが、私はこの1983年の一年間研究ビザをとって、ソロにいた。おそらくはASKIの片隅で、十七歳のキ・ウントゥスと擦れちがっていても、ふしぎではない。

ゴロゴロ通信57
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シンデン・ジュパンとの気楽な30分対話
狩野裕美(ソロ在住)+松本亮
「ノントン・ワヤン」  高橋 佐貴子

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