アルジュノの饗宴
Arjuna Wiwaha

2000年9月 キ・マンタプ・スダルソノ&サンガル・ビモ日本公演より



 一〇四五年、東部ジャワ・クディリ王国の宮廷詩人ムプ・カムワが時の王アイルランガに、長編叙事詩「アルジュノの饗宴」を捧げた。古代インドの大叙事詩マハーバーラタの一挿話を素材として、アイルランガ王に国難に対処する英気を要請する意図をこめたものとされる。中世ジャワ文学の白眉である。やがて絵巻物によるワヤン・ベベルとして、十五、六世紀以降はワヤン・クリ(影絵芝居)の演目として、今日なお盛んに上演される。アルジュノはマハーバーラタきっての美丈夫であり、最強の武芸者である。
◎いずこの国ともしれぬイモイマントコ国の魔王ニウォトカウォチョの登場。彼は一夜の夢に見た天界の美女スプロボを嫁に迎えようとして、天界に使者を出し、一方、その超能力で察知した邪魔者アルジュノを排除しようとする。アルジュノは山中で苦行中である。your graphic aligned to the right
◎至高神ブトロ・グルの住む天界では魔王の脅威について協議中。魔王には神は対抗しえず、それは至高の人間でなければならぬ。神はパンダワの三男アルジュノに白羽の矢を立てるが、まずその志操の堅固さを試すための七人の天女たちによる誘惑、ついで天界守護の神インドロとの処世観論争、ブトロ・グル自身との戦い、この三つの試練を課す。
◎天界へのプロポーズの使者に立った魔王の部下は、当然のように拒否され、風神バユ、火神ブロモと戦い敗退する。場面変わって、アルジュノの三つの試練の場である。
◎ふだんは女性に弱いアルジュノもこの時ばかりは天界の美女たちの誘惑に微動もしない。
◎老僧に変身したインドロ神とのこの論争は、武将の処世観を語る深い哲理とされる。
◎ブトロ・グルとの冴えざえとした戦闘場面はダランの人形操作の見せどころといわれる。your graphic aligned to the left
◎三つの試練において神の意にかなったアルジュノは、魔王ののぞむ美女スプロボを伴い、敵地にのりこむ。夢に見た美女を前にして心おののく魔王は、うかつにも自分の急所を美女に洩らす。急所を知られた魔王は死闘の果て、アルジュノの矢に倒れるのである。
 これはマハーバーラタにおいて、さいころ賭博に敗れたパンダワ五王子が十二年間の山中放浪中の話である。アルジュノの性格には三つの大きな特徴がある。まず苦行好き、最高に女性にもてること、そして最強の武芸者。この演目にはこの三つが十全に示されている。



Photo by Tadashi Kumagai

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