ドゥルユドノの最期 |
2000年9月 キ・マンタプ・スダルソノ&サンガル・ビモ日本公演より |
この物語は、一一五七年完成とされる長編叙事詩『バラタユダの書』の大戦争大詰めの場に描写される。ここではコラワ軍の老雄サルヨ、悪の知恵者スンクニ、そしてコラワ軍の総帥ドゥルユドノの戦死が扱われる。『バラタユダの書』は時のクディリ国王ジョヨボヨが宮廷詩人に命じ、完成させたもので、マハーバーラタの最期に仕組まれた大戦争バラタユダの全貌を展開する。悲惨なパンダワ、コラワ両軍の死闘である。ジョヨボヨ王はこれを完成させることで、自らが王となるまでに犯してきた罪を贖おうとしたと伝えられる。 |
◎十八日間の大戦争は大詰めの十八日目を迎え、大勢はパンダワ軍の勝利に傾いている。サルヨ王はパンダワに心を寄せているが、身はコラワ軍にある。一方、パンダワの三男アルジュノは敵を前にして戦意が湧かない。コラワ軍は敵とはいえ、すべて身内なのだ。これを叱咤するクレスノ。やがてクレスノはパンダワの長兄ユディスティロに会う。 ◎ユディスティロは根っからの非戦論者である。だがサルヨと対決する運命にある。その宿運によりサルヨは ユディスティロの読む聖句に射られ、斃れる。 ◎ドゥルユドノは自軍のひたすらな敗北に神の不公平を嘆いている。大臣のスンクニを前にして彼をなじり、スンクニもまた悪態をつく。 ◎スンクニがパンダワの次男ビモと対決する。スンクニはかつて肛門部分を除いて全身に不死身の聖油を浴びたことがあり、ビモも手を焼く。スマルの忠告で、肛門部分から全身の皮を剥ぎとり、ビモはスンクニを死にいたらせる。もがれた片腕が投げられ、ドゥルユドノの面前に落下する。ドゥルユドノは逃亡し、池の中にひそみ、水中の苦行に入る。 ![]() ◎クレスノにより大戦争からはずされていた兄ボロデウォが登場する。ボロデウォがドゥルユドノを呼び上げる。巨大な棍棒によるドゥルユドノとビモの一騎打ち。さまざまな駆け引きの中の死闘のうちに、ついにドゥルユドノが斃死する。 |
この演目はワヤンの全作品のうち最も重く悲惨な結末を迎えることで、ジャワでもめったに上演されることがない。ワヤンは本来ハッピーエンドの演目はなく、つねに因果応報の輪廻のうずの中で、人に倫理を訴えるのである。![]() |
Photo by Tadashi Kumagai |
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