デウォ・ルチ
Dewa Ruci

2000年9月 キ・マンタプ・スダルソノ&サンガル・ビモ日本公演より



 初演は一四五〇年ころの東部ジャワ。ヒンドゥー教を奉ずるモジョパイト王国をイスラム教布教により内部から突き崩そうとしていた聖者たちの一人によって構成されたといわれる。すでに浸透していたヒンドゥー教の聖典マハーバーラタの物語を換骨奪胎、そこにイスラム教の理念を根付かせようとしたのだ。ここにワヤン・ベベルは影絵芝居としてのワヤン・クリに追いやられる。「デウォ・ルチ」はその代表的演目となり、今日にまで引き継がれることにことになる
◎パンダワ五王子の次男ブロトセノはかつての彼らの武芸の師ドゥルノが《生の完全性》にかんする理念を教えているのを知り、ドゥルノがいまは敵方にあって、彼を殺そうと企んでいるのも知らず、兄弟たちの制止をふりきり出発する。ドゥルノは、まず山中に入り、風の隠れ家なる木を、さらには大海に入り、生命の水を見つけて来るようにという。
◎人跡未踏の山に入って、ブロトセノは二人の怪物に会う。死闘の末、怪物は風神バユと天界守護の神インドロに変わり、ここには何もない、すぐに大海へ向かうのだという。
◎ゴロゴロの場面。道化たちが登場し、一般には歌を競ったり、風刺をとばしたりする。
◎ブロトセノの行動を心配した弟のアルジュノが、彼のあとを追い、森の無頼漢と戦う。
◎一方、ブロトセノは大海のほとりに立ち、荒れ狂う波にとび入る。激浪に翻弄される。やにわに大蛇が襲い、死闘のはてに失神し、夢うつつの中で、その鋭い手の爪で大蛇を刺す。なおも激浪に翻弄され、意識を失おうとして、自分の姿にそっくりな小さな人物の出現をみる。それが彼自身の魂の内なる神デウォ・ルチであった。
your graphic aligned to the left◎ブロトセノはデウォ・ルチからさまざまな教訓を与えられる。おのれ自身を知れ、と。
◎たちまちにしてブロトセノは地上に立っている。彼は何も見つけえなかったが、大いなる精神の悟達をえたことで、彼を殺そうとした師ドゥルノに深い感謝を捧げる。
ここにはマハーバーラタの諸人物が登場するが、この物語は本来のマハーバーラタには存在しない。派生した物語による演目はチャランガンと呼ばれ、夥しい数にのぼるが、そのうち傑出した作品は古典として、今日になお多く受け継がれている。



Photo by Tadashi Kumagai



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