このラコンはラコン「ガレンとペトルの誕生」の別ヴァージョンである。 父サン・ヤン・トゥンガルの命を受け、サン・ヤン・イスモヨは高貴なる見識をもつ武将(サトリヨ)の守護者となるために、地上に降下した。彼は当初ジャンガン・スマラソントと名乗った。彼は高貴なる人間を捜して一人で放浪した。時が過ぎ、ひとりぼっちの寂しさが募った。ジャンガン・スマラソントはかくてサン・ヤン・トゥンガルに乞うた。どうか高貴なクサトリアを見いだすために仲間をお与えください、と。 サン・ヤン・トゥンガルは言った。「ずっとそなたに付き従う忠実な仲間がいるではないか。それはそなたの影である」と。 その時スマルの影が彼にそっくりな姿のものとなった。しかし、少し小さかった。ジャンガン・スマラソントはそれをバゴンと名付け、彼の子供とした。 二人は旅を続けた。 間もなく池の岸辺で、二人の立派なクサトリアが喚きながら争っているのに会った。 ジャンガン・スマラソントは、なぜ彼らは争っているのかと尋ねた。ふたりが言うには、彼らの名は各々、パデポカン・ブルクティボのバムバン・スカダディ、そしてパデポカン・クムバンソレのバムバン・プルチュパニュキランである、と。 二人ともひじょうに強くて立派なクサトリアであった。好きな事も同じで、ひとつの国から別の国へ、ある森から別の密林へと放浪する事である。ある時二人のクサトリアは出会ってしまった。彼らは各々自分が一番立派だと言い張って、争いになった。まさしくその超能力は拮抗していた。ついに争いは数日に及び、勝負はつかなかった。 はてしない争いは、今やジャンガン・スマラソントに分けられて終わった。バムバン・スカダディとバムンバン・プルチュパニュキランは、二人のうちどちらが一番立派かをスマラソントに決めてもらうことにした。 ジャンガン・スマラソントは答えた。二人はどちらも立派ではない、と。そして池に姿を映してみるようにと言った。 すると、彼らの姿はへんてこに変わり果てていた。一人の鼻は長く伸び、身体も長くなっていた。もう一人は薮睨みとなり、鼻は茄子の実のようになっていた。二人のクサトリアは変わり果てた姿を後悔し、スマラソントは慰めた。重要なのは見てくれの立派さや、自身の超能力ではなく、どのような人に仕えるかということである、と。 スマラソントの良識に心打たれ、バムバン・スカダディとバムバン・プルチュパニュキランは見識ある人になれるようにと、彼に父になってくれるよう求めた。彼らはスマラソントの行くところ何処へでも付き従うことを誓った。ジャンガン・スマラソントは同意し、かくて二人の名をノロ・ガレン、そしてペトルに代えた。 彼らは四人となり、ジャンガン・スマラソントは後にスマルと呼ばれるようになった。スマルとガレン、ペトル、バゴンは共に高貴なる見識を持つ武将に仕える者として知られるようになった。 |
![]() |